インターネットでかなり家賃が安くて、良い部屋を見つけた!
でも、よくよく細かく見ていくと、”定期借家”という聞き慣れてない言葉が・・・
一体、どのような意味だろうか?
この記事では、部屋探しをする際に気をつけなければならない定期借家について解説します。
目次
普通借家と定期借家の違い
定期借家を理解するには、まずは、一般的な賃貸借契約である”普通借家”について知る必要があります。
普通借家
普通借家とは、私たちが賃貸マンション・アパートを借りるときに交わす、一般的な契約を言います。
普通借家は、借地借家法でルールが定められており、
- 貸主(オーナー)から賃貸借契約を容易に終了できない(借地借家法第28条)
- 借主(入居者)に不利な特約は無効になる(同法第30条)
など、借主保護に重点が置かれた内容となっています。
契約方法 | 原則、書面・口頭のどちらでも契約は成立します。 ※ただし、不動産業者(宅地建物取引業者)が仲介する場合は、「重要事項(35条書面)の説明」および「賃貸借契約書(37条書面)の交付」が法律で定められています。 |
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契約期間 | 一般的には、2年間が設定されています。 ※もし、契約期間を1年未満に設定した場合、「期間の定めのない契約」と見なされ、その契約期間が無効になってしまいます。 |
契約更新 | 「正当な事由」がない限り、契約は更新されます。 ※貸主は、正当な事由がない限り、借主に対して、契約更新を拒絶したり、退去させることはできません。 |
途中解約 | 貸主から途中解約する場合、「正当な事由」がない限りできません。 借主から途中解約する場合、賃貸借契約の内容に従います。(一般的には解約の1~2ヶ月前に申し入れることで契約が終了します。) |
家賃の値上げ | 正当な事由がある場合、賃料増減額請求ができます。 ※正当な事由とは、租税の増減による建物価格の変動、経済事情による土地・建物価格の変動、周辺の類似物件の賃料と比較して不相当な場合です。ただし、借主の承認が得られない場合は、話し合いや調停、裁判を提起する必要が生じます。 |
契約更新における正当な事由とは
普通借家は、「借主を保護する色合いが強い」と言っても、借主が家賃滞納・不法滞在者・迷惑行為(騒音・悪臭)などの契約違反行為を行った場合は、話し合いや裁判所の判断より立ち退きを要請できます。
その他、次のような「正当な事由」がある場合、契約更新を拒絶することが可能です。
- 建物の使用を必要とする事情(貸主が貸している建物を使う必要がある)
- 建物の現況(建物が著しく老朽化し、倒壊などの危険性がある)
- 財産上の給付(立ち退き料等の申し出)
また、「正当な事由」であったとしても、立ち退き料がない場合、認められるケースは極めて稀なのが実情です。
普通借家ができた背景
現在の普通借家の基になった法律が誕生したのは、大正10年にさかのぼります。
当時は、借主の権利は非常に弱く、土地価格の上昇などを理由に、あちこちで貸主(地主)による無理な立ち退きが行われ、社会問題になっていました。
ただ、この時代に借地借家に関する法律が生まれはしましたが、まだまだ形式的なものであまり効力を持つものではありませんでした。
今日のような借主保護に重きが置かれた法律に改正されたのは、戦時下の昭和16年になります。
出征した兵士が戻ったときに住む場所がないなど、戦後の混乱を避ける目的で制定されました。
この法改正により、「契約更新の拒絶に正当な事由が必要」=「借主保護に重点が置かれた法律」となり、今日に至ります。
定期借家
定期借家とは、2000年(平成12年)3月1日に施行された「良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法」に基づき改正された制度を言います。
貸主からの契約更新の拒否が難しい「普通借家」と違い、契約期間満了をもって賃貸借契約が一旦終了します。
つまり、契約期間が終了した後、貸主が「再契約」をしなければ、借主(入居者)は、マンションを退去しなければなりません。
契約方法 | 公正証書等の”書面”により契約は成立します。 ※ただし、「契約の更新がなく、期間の満了により契約は終了すること」を記載した書面を交付し、説明しなければなりません。 |
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契約期間 | 自由に設定できます。 ※1年未満の契約期間も認められます。 |
契約更新 | 契約期間満了により、契約は終了します。 ※貸主と借主が合意すれば、「再契約」ができます。 |
途中解約 | 貸主からは原則途中解約ができません。 借主から途中解約する場合、「転勤・療養・親族の介護など」やむを得ない事情が発生したときのみ、申し入れから1ヶ月で契約が終了します。 |
家賃の値上げ | 家賃改定の特約がある場合、その定めに従います。 ※借主の承認が得られない場合は、契約満了をもって退去させることができます。 |
定期借家ができた背景
上記で説明したとおり、従来の普通借家は、あらかじめ契約期間を○年間と取り決めたとしても、借主が住み続けることを希望する限り、契約は更新され、退去させるのは難しい仕組みでした。
そのため、「1年間転勤で留守にするので、その間だけ今住んでるマンションを貸したい」など思っても、安心して他人に貸すことができず、空き家として放置されるケースが多くありました。
このような背景があり、”優良な賃貸が供給されやすくなることを目的”に定期借家の制度ができました。
おとり物件に注意
最近では、「定期借家」を使ったおとり物件も存在するようです。
おとり物件とは、実在しない「架空の物件」を客寄せのために広告として打ち出すことをいいます。
おとり物件の流れ
- 条件が良い「定期借家」で釣って来店を促す
- 来店時に「定期借家」のデメリットを説明
- 本当に契約してほしい「違う物件」を案内する
もし、他の物件と比較して、著しく家賃が安かったり、”おかしなくらい良い物件”があったなら、おとり物件を疑ったほうが良いでしょう。
▲定期借家の例(契約期間1年)
最後に
借主保護に重点を置かれた「普通借家」では、一度物件を貸し出すと半永久的に返還されない可能性がありました。
「定期借家」では、そのようなリスクがなくなり、貸主が安心して物件を貸せるようになっています。
借主にとっては、契約満了に伴い部屋を追い出されるリスクはありますが、
- 物件の供給量が増えることで、理想の部屋が見つかる可能性が高まる
- 貸主は問題を起こす入居者に対して、再契約を拒否できるため、そのマンションの入居者の質が保たれている
- 3ヶ月間などの短期契約ができる
などのメリットも存在します。