弊社では、お陰さまで日々多くのお客様より、物件のお問い合わせを頂いています。
その中でよく
「本当にこの部屋空いてるの?」
「これって、おとり物件ではないですよね?」
という質問をもらいます。
実際、大阪では、”おとり広告”と呼ばれる手法が蔓延しており、多くの方が引っかかっています。
この記事では、不動産業界で問題となっている”おとり広告”の手法や実例、対策をまとめています。
目次
おとり広告とは
おとり広告とは、実在しない「架空の物件」を客寄せのために「広告」として打ち出すことをいいます。
手口としては、
- 実在しない”好条件の物件”をネットに掲載
- お客様に「掘り出し物件を見つけた!」と思わせて、直接お店に来てもらう
- 来店時に「今、キャンペーン中で安いだけ。3ヶ月後に家賃上がる」「更新料が高い」「民泊専用の物件」「定期借家」など、適当な理由をでっち上げて諦めさせる
- 本当に”契約してほしい物件”を案内する
が大まかな流れです。
おとり広告をする理由
なぜ、おとり広告をするのか?
その理由は、単純明快で「来店数」しいては「売上」を増やすためです。
売上は、次の図式で示すことができ、
売上 = 来店数 × 契約率 × 客単価
売上を上げるために、なによりも、「来店数」を増やすことが重要。
そのために、悪徳な不動産屋は、おとり広告を用いて、とにかく来店させ、契約のチャンスをつかむわけです。
本来なら、
- 魅力的な物件を掲載する
- お客様の要望に沿った物件を提案する
- 信頼を得る対応を心がける
など、真っ当な方法で他社と差別を図るべきです。
ですが、悲しいことに中には、「嘘でもいいから、他社より魅力的な物件をネットに掲載して呼び込もう」と考える不動産会社が多いのが現状です。
悪い不動産会社は、その弱みにつけこんで、適当な理由でお問い合わせ物件を諦めさせ、あらかじめ用意している利幅の大きい物件を契約させます。
有名サイトだったら大丈夫?
テレビCMなどでお馴染みのポータルサイト(SUUMO、HOMES、at home、CHINTAI、Yahoo!不動産、マイナビ賃貸、いい部屋ネットなど)であっても、残念ながら、おとり広告は存在します。
というのも、ポータルサイトの運営会社は、不動産会社ではなく、あくまでも物件情報を見やすく掲載している「情報サイト」です。
物件情報自体は、各地域の不動産会社が提供しています。
つまり、ポータルサイトが物件情報を掲載してるのではなく、不動産会社が物件情報をポータルサイトに掲載しているのです。
ポータルサイトも「おとり広告」のチェックと取り締まりを(程度の差はあれ)していますが、膨大な物件掲載数があり、追いついていないのが現状。
「聞いたことある会社だから安心」というわけでなく、よく耳にする大手不動産会社ですら、おとり広告で公正取引委員会から排除命令を受けているケースがあります。
Webサイトや会社の規模にかかわらず、おとり広告は、警戒したほうが良いでしょう。
【不動産業界の裏側】ポータルサイト(スーモ、ホームズ)の仕組みを徹底解説
駅前には、テレビCMで見かける不動産会社(エイブル、アパマンショップ、ホームメイト、ピタットハウス、ミニミニなど)がたくさんありますが、実は、これらほとんどは「フランチャイズ(FC)」です。
勘違いする方が多いですが、大手不動産会社の「支店(直営店)」ではありません。
直営店は、ほんのごく一部です。
フランチャイズとは、一定のロイヤリティ(権利使用料)を払って、「看板を借りる」「のれん分けしてもらう」ことです。
ロイヤリティはかかりますが、まだ実績も知名度もない不動産会社にとっては、大手のブランド力を借りることで、見た目の信用があがり、集客力を得られるメリットがあります。
しかしながら、フランチャイズは、あくまでも名前を借りているだけ。
よくよく見ると、「○○○チェーン △△△店 (株)×××」と表記されています。
経営ノウハウや研修制度などの提供は受けますが、実態は、街の不動産会社。中身はバラバラです。
「大手だから、おとり広告をしない」という色眼鏡をかけるのではなく、本当に誠実で良い不動産会社を選びましょう。
おとり広告は禁止されている
当たり前ですが、おとり広告は、禁止されている行為です。
宅建業法違反の他、不動産の表示に関する公正競争規約でも禁止され、罰則の対象となります。
(おとり広告)
第21条 事業者は、次に掲げる広告表示をしてはならない。
(1)物件が存在しないため、実際には取引することができない物件に関する表示
(2)物件は存在するが、実際には取引の対象となり得ない物件に関する表示
(3)物件は存在するが、実際には取引する意思がない物件に関する表示出典:不動産の表示に関する公正競争規約
不動産の表示に関する公正競争規約とは、不動産の広告表現に関して、業界団体(不動産公正取引協議会)が設定したルールです。
※法律ではありませんが、行政機関の一つである「公正取引委員会」の認定を受けています。
ルールを守らない会員事業者に対しては、
- 警告または50万円以下の違約金を課す。
- 警告に従わない場合は、500万円以下の違約金を課し、除名処分。または、消費者庁に通報する。
などの措置が取られます。
上記は、業界団体の自主規制となりますが、宅地建物取引業法違反と認められれば、
- 業務停止または免許取り消し
- 罰則で6ヶ月以下の懲役、30万円以下の罰金または併科
とより重い罰則がかせられます。
おとり広告の実例
では、ここから、おとり広告の具体的な実例をいくつかご紹介していきます。
1、架空の物件を掲載
この世に存在しない物件をでっちあげて掲載する悪質なパターンです。
2、取引する意志のない物件を掲載
主に不動産会社が所有している物件を相場より安い家賃で掲載するパターンです。
実際に取引する意志がないため、来店しても成約に至ることはありません。
◎ 1物件は、D社の役員が代表取締役となっている関連会社が所有者(個人)から借り上げたものをD社が仲介として広告しているが、次の理由から、取引する意思のない「おとり広告」と認められる。
[1] 調査対象の情報サイト及び他の3社の情報サイトの広告掲載期間(平成25年9月中旬から平成26年2月下旬)において、相当数の問い合わせ(274件)があったにもかかわらず、成約に至っていないこと。
[2] 表示の賃料及び管理費の合算額は、関連会社の借上げ賃料及び管理費の合算額よりも27,000円安く、また、他の3社の情報サイトに掲載していた賃料及び管理費の合算額においても、22,000円から33,000円も安いこと。
[3] 表示の賃料及び管理費の合算額は、本物件と同じ建物内で他社が募集していたほぼ同規模の住戸の賃料及び管理費の合算額よりも20,000円から30,000円も安いこと。
3、嘘の情報を出している
一応物件は存在しますが、
- 家賃を安く提示する
- 築年数を浅くする
- 駅からの距離を短くする
- ペット禁止なのに「ペット相談可」とする
などで好条件に見せるパターンです。
取引条件の不当表示
◎「賃料 7.5万円」⇒ 83,000円
◎「賃料 7万円」⇒ 110,000円
◎「ペット相談」⇒ ペットの飼育は禁止されている(2件)。
◎「礼金 -」、「敷金 -」⇒ いずれも220,000円を要す(1件)。
◎「代理」⇒ 媒介であり、賃貸借契約が成立した場合には、賃料のほかに媒介報酬を要す(1件)。
◎ 鍵交換費用(4件)及びルームクリーニング費用(1件)を必要とするのに、その費目及びその額不記載。
◎ 保証会社と賃貸保証委託契約の締結を必要とする旨及びその額不記載(3件)。
少しでも条件を良くすることで、「掘り出し物件」と思わすだけでなく、ポータルサイトの絞り込み検索(家賃5万円まで、駅から徒歩5分以内など)に引っかかりやすくします。
パターン1と同じく、この世に存在しない条件の物件です。
4、すでに埋まっている部屋を掲載
おとり広告でよく使われる手法となります。
すでに埋まっている(入居者がいる)と知りつつ、お問い合わせが来やすい物件なので、掲載し続けているパターンです。
新規に情報公開した後の2012年6月30日に契約済みとなったが、削除することなく情報の更新を繰り返し、広告時点(2013年10月28日)まで約1年4か月間も継続して広告(おとり広告)を掲載したものである。
おとり広告とは言っても、一度は、存在した物件。
「家賃が安すぎる」「好条件すぎる」物件と比べて、見分けがつきにくくなっています。
おとり広告の見分け方
おとり広告に騙されないためのポイントを紹介します。
1、おかしなくらい好条件の物件に注意
他の物件と比較して、著しく家賃が安かったり、”おかしなくらい良い物件”があったなら、おとり広告を疑ったほうが良いでしょう。
例えば、
- 大国町駅から徒歩3分、敷金礼金ゼロ、家賃4.7万円、築浅1DK
という条件の物件です。
大国町駅の一人暮らし向け物件(ワンルーム、1K、1DK)の家賃相場5.9万円より“2割ほど”も安くなっています。
仮に家賃相場より安ければ、築年数が経っていたり、駅から離れていたり・・・など、何かしらのデメリットとなる条件があるはずです。
基本、余程の訳あり物件(自殺などの事故物件)でない限り、著しく安くなることはありません。
同じような条件の物件なのに、家賃が安すぎるなら、要注意です。
2、定期借家契約に注意
物件広告に「定期借家契約」と記載されているなら、疑ってかかったほうが良いでしょう。
よくあるのは、
- 条件が良い「定期借家」物件を掲載して来店を促す
- 来店時に「実は、定期借家だから、1年しか住めません」など、定期借家のデメリットを説明
- 本当に契約してほしい「違う物件」を案内する
という手口です。
分譲賃貸マンションでよく使われている手口なので注意しましょう。
一般的に私たちが部屋を借りる際に結ぶ「普通借家契約」は、貸主(オーナー)から賃貸借契約を容易に終了できない契約となります。
一方、定期借家契約は、契約期間満了をもって賃貸借契約が一旦終了。
オーナーが「再契約」を結ばなければ、借主(入居者)は、強制的に部屋を退去させられてしまいます。
関連記事:定期借家とは?おとり物件に注意
良心的な不動産会社で確認してもらうのも手
ここまで、おとり広告の実例や見分け方を紹介しました。
でも、実際、明らかに「おとり広告だ!」という物件を見つけたとしても、「もし、本当に存在するなら、見逃すのはもったいない・・・」とわずかな望みにかけて、問い合わせてしまうもの。
そんなときは、良心的な不動産会社に相談してみるのも1つの手です。
というのも、一昔前は、不動産会社によって、取り扱っている物件数などに違いがありました。
しかし、今は、国土交通大臣指定の「不動産流通機構(通称:レインズ)」という仕組みにより、”ほぼ全て物件情報”がインターネット上で共有化されています。
つまり、基本的には、どこの不動産会社でも、同じ物件を確認でき、案内してもらえます。
(※一部例外として、その不動産会社でしか取り扱っていない賃貸物件も少ないながら存在します。)
弊社でも、大阪限定にはなりますが、他社掲載物件も含め、「おとり広告かどうか」無料でお調べしています。
「これってひょっとして、おとり広告?」と思ったら、お気軽にご相談ください。
TEL:06-6630-3300(営業時間:10:00~20:00)
- 消費者庁
- 不動産公正取引協議会連合会
- 大手ポータルサイト(SUUMO、HOMESなど)
で用意されています。
どこの不動産会社に行っても同じ?
どこの不動産会社でも、同じ物件を確認できるようになったとは言え、
- 新しく出来たばかりの不動産会社
- 古くからある地元の不動産会社
を比べれば、当然のことながら、情報量に差があります。
地元の不動産会社は、長年同じ地域で営業している訳ですから、地域情報や物件の特性(利便性、交通量、騒音、夜道の明るさ、治安、入居審査の通りやすさ、民泊の多い物件など)に詳しいです。
また、その地域の物件情報を一通り把握しているので、「こんな物件を探しているけどある?」と質問したとき、すぐに答えてもらってスムーズな部屋探しができたり、ネットでは探しきれなかった物件を紹介してもらえます。
地元や家主との付き合いが長いため、初期費用や家賃など条件面で融通がききやすいのもメリット。
すでにその地域に詳しいなら別ですが、あまり知らない土地に引っ越すなら、古くからある地元の不動産会社を選んだ方が良いでしょう。
意図せずに「おとり広告」になるケースも
ただ、上記に当てはまる不動産会社すべてが意図的に「おとり広告」をしている訳ではありません。
というのも、1つの物件に対して、不動産会社1社が独占的に広告宣伝しているケースはごく稀です。
通常は、”ABCマンション”という物件を「不動産会社A」「不動産会社B」「不動産会社C」「不動産会社D」・・・と複数の不動産会社がそれぞれ広告宣伝しています。
このような仕組みから、仮に「不動産会社C」が物件を成約したとしても、その情報がリアルタイムで共有されることが難しくなっています。
その結果、物件更新を更新するタイミングなどのズレから、すでに埋まっている部屋を掲載してしまい、意図せず「おとり広告」になってしまっているパターンがよくあります。
特に不動産の繁忙期(10月~3月あたり)は、物件の入れ替わりが非常に激しい時期。
実際に「昨日、部屋が空いていたのに、翌朝には埋まっていた。」はよくあることです。
物件の更新時期が長過ぎるなら考えものですが、このような不動産会社なら、まだ、誠実な対応が期待できます。
最後に
おとり広告は、「少しでも好条件の物件を探したい」という客層の心につけこんだ許されない行為です。
おいしい情報を見れば興奮しますし、冷静に考えられなくなることもありますが、まずは、その物件広告を見て違和感がないかを考えてみてください。
「おとり広告のせいで貴重な時間をムダにしてしまった・・・」とならないために、あまりに現実離れしている好条件の賃貸物件からは、身を引くことも大切です。
弊社運営の賃貸情報サイトは、”おとり広告ゼロ”はもちろん、まめな更新で”成約済み物件ゼロ”を心がけています。
なんば周辺で部屋探しをしているなら、是非、こちらから部屋探しをしてください。