- 親から家を相続した
- 急に転勤することになった
- 家族が増えて狭くなってしまった
など、さまざまな事情で持ち家に人が住まなくなっていまうことがあります。
この記事では、持ち家を貸すか売るかについて、不動産屋の目線で「どちらが良いか」を解説しています。
目次
住宅ローンが残っているか
まず、持ち家を
- 貸すか
- 売るか
を検討する上で住宅ローンの有無は重要な判断材料になります。
先に結論を言っておくと、
貸す | 売る | |
---|---|---|
住宅ローンが残っていない | ○ | ○ |
持ち家の売却により住宅ローンを完済できる | △ | ○ |
持ち家を売却しても住宅ローンが残る | △ | × |
となります。
住宅ローンが残っていない
すでに住宅ローンを完済している場合は、何の問題もなく持ち家を「貸すこと」も「売ること」もできます。
持ち家の売却により住宅ローンを完済できる
まだ住宅ローンが残っている場合であっても、
- 住宅ローンを完済できる金額で売却できる
- 住宅ローンを完済できる自己資金がある
といった場合は、問題なく持ち家を「売ること」ができます。
また、
で紹介したとおり、金融機関から承諾さえもらえれば持ち家を「貸すこと」も可能です。
持ち家を売却しても住宅ローンが残る
やっかいなのは、持ち家を売り、自己資金や新借入金でも住宅ローンを完済できない場合です。
この場合は、持ち家を「売ること」は難しくなります。
例えば、住宅ローンが3,000万円残っていて、
- 売却金額が2,000万円
- 自己資金が500万円
といった場合、自己資金をすべてつぎ込んでも500万円の住宅ローンが残ってしまいます。
さらに持ち家の売却には、
- 印紙税
- 登録免許税
- 司法書士費用
- 仲介手数料(売却価格の3.24%+6万4,800円)
などで合計75万円ほどかかるので、不足額はもっと増えることになります。
抵当権を外せない
住宅ローンを返済できない場合に問題となるのが、金融機関の抵当権が外せないことです。
抵当権とは、契約者が住宅ローンを返済できないとき、持ち家を金融機関が取り上げられる権利のことを言います。
この抵当権は、住宅ローンを完済するまで外すことはできません。
つまり、住宅ローン返済中の持ち家を売るということは、”抵当権付きの持ち家を売る”ということです。
普通、抵当権付きの家を買う人はいません。
なぜなら、持ち家の売却後、その売主が住宅ローンの支払を滞納した場合、新しい所有者である買主の家が差し押さえられてしまうためです。
どうすればいいの?
結局、持ち家を売っても住宅ローンを完済できない場合、どうすればいいのかというと、
- 住み替えローン
- 無担保ローン
- 任意売却
の3つの方法を取ることになります。
1、住み替えローン
住み替えローンとは、新しく持ち家やマンションを購入する方が選択できる方法で
- 現在の住宅ローン
- 新しい住宅ローン
を一緒にすることのできる住宅ローンをいいます。
ただし、住宅ローンが多額になるため、審査も厳しくなり、借りることができない可能性もあります。
2、無担保ローン
無担保ローンとは、家や土地などの担保なしに借りられるローンです。
具体的には、
- 銀行や消費者金融のカードローン
- クレジットカードのキャッシング
などを指し、ここで借りたお金を住宅ローンの返済にあてることになります。
ただし、金利が高く設定される傾向があるため、計画的に借りないと自己破産にも繋がってしまいます。
3、任意売却
任意売却とは、住宅ローンを返済できなくなり、滞納した状態が続いたときに行われる手続きとなります。
任意売却は、競売と違って、市場価格に近い価格で売却できる反面、
- ブラックリストに載る
- 債権者(金融機関)の同意を得るために交渉する必要がある
といったデメリットがあります。
特にブラックリストに載ってしまうことは、今後5〜7年ほどは大きなローンを組めなくことを意味するため、慎重に検討すべきでしょう。
将来、その持ち家に住むかどうか
- 急な転勤
- 親の介護
などで一時的に持ち家を離れるだけ(将来、住む可能性がある)であれば、「貸すこと」をおすすめします。
以前に『持ち家が空き家になった【維持・管理方法まとめ】』で紹介したとおり、空き家のままにしておくと、1ヶ月に1回程度
- 換気
- 通水
- 掃除
などをしなければならず、思っている以上に手間や費用がかかります。
空き家を人に貸すことで、維持・管理の手間から開放されるだけでなく、家賃収入を得ることも可能です。
借主と定期借家で契約をしておけば、契約期間を自由に決めることも可能。
例えば、契約期間を3年と定めていれば、3年後に確実に明け渡されます。
将来、値上がりするかどうか
持ち家の価値が値上がりするかどうかも「貸すか」「売るか」を検討する上で判断材料になります。
先に結論を言っておくと、持ち家が
- 値上がりする → 貸す
- 値下がりする → 売る
の判断すればいいでしょう。
基本的に持ち家は、築年数が経つほど魅力がなくなり、「家賃相場」「売却価格」ともに減少していきます。
しかし、持ち家がある地域によっては、
- 人口の増加
- 交通アクセスの良さ
- 商業施設やオフィス・ホテルの建設
などを理由に地価が上昇することもあります。
将来的に持ち家の売却価格が上がることが見込めるのであれば、それまで賃貸経営で収益を得つつ、値上がりを待つべきでしょう。
逆に持ち家の売却価格が大幅に下落する可能性が高いのであれば、築年数が浅く、高く売れるうちに売却すべきです。
インフレ対策として保有するのもあり
持ち家が値上がりするかどうか予想できないのであれば、インフレ対策として保有するのも一つの選択肢です。
インフレとは、物価上昇によって現金の価値が下落することを言います。
例えば、インフレ率2%だとすると、今、銀行に預けている100万円が
- 1年後には98万円
- 2年後には約96万400円
- 3年後には約94万1000円
- 4年後には約92万2200円
- 5年後には約90万3900円
・・・
とどんどん価値が無くなってしまうことを意味します。
持ち家を含む不動産資産は、物価が上昇すれば同じように価値が上昇するため、インフレ対策として有効です。
現在、日銀はインフレ率2%を目標に大規模金融緩和政策を実施しているので、不動産資産の保有を含めたインフレ対策は頭に入れておくべきでしょう。
管理の手間をかけれるか
賃貸経営は、継続的な収入を得られる一方で
- 家賃滞納をされた
- 設備が壊れてしまった
- 騒音やゴミ出しの方法などで近隣住民と揉めている
などといったトラブルは付きものです。
ほとんどの場合は、不動産管理会社と入居者との間でトラブルは解消されますが、大きなトラブルが発生すれば、直接対応しなければならない可能性があります。
※自主管理していれば、ご自身ですべて対応しなければなりません。
また、持ち家の住宅設備である
- キッチン
- 洗面台
- トイレ
- 給湯器
- 水栓やパッキン、配管
などは、一般的に耐用年数が十数年ほどとされおり、定期的な交換や修繕工事は必須。
修繕工事の計画を立てたり、実際に工事をする場合は業者の選定や見積もり、打ち合わせなどをしなければなりません。
仕事と両立しながら賃貸経営をされている方は多くいらっしゃいますが、とにかく手間を一切かけたくない方は、持ち家を「売る」選択をすべきでしょう。
新しく住宅ローンを組むか
これから、新しく持ち家を購入する予定があるなら、今の持ち家を「売ること」でより多くの住宅ローンが組めます。
例えば、
- 住宅ローンの借入可能額が3,000万円
- 住宅ローン残債が1,300万円
であれば、1,700万円しか借りることができません。
新しい持ち家を購入するために、より多くの住宅ローンを組みたいのであれば、現在の持ち家は売らなければなりません。
まとめ【どっちが得する?】
ここまでを総合して、持ち家を「貸す」「売る」のメリットとデメリットをまとめると、次のとおり。
メリット | デメリット |
---|---|
・家賃収入が得られる ・将来、その持ち家に住むことができる ・不動産資産を保有できる |
・建物の維持・管理や入居者対応の手間がかかる |
メリット | デメリット |
---|---|
・まとまった収入が得られる ・建物の維持・管理や入居者対応の手間から開放されて、精神的に気楽でいられる |
・住宅ローンが残るなら自己資金や新規借入金で精算が必要となる(完済できなければ抵当権が残るため、持ち家の売却は難しい) ・不動産資産を失う |
この他にも、今後、持ち家の価値が値上がりするかどうかも考慮したいところです。
基本的には、持ち家が
- 値上がりするなら「貸す」
- 値下がりするなら「売る」
という選択で、もっとも得をする可能性が高くなります。
ただし、持ち家を貸す場合は、家賃収入だけでなく、管理費や修繕費用も考慮しなければなりません。
だからこそ、長期的な目線で「どのくらいの利益を得られるか」をシュミレーションすべきです。
弊社では、これまでに多くのお客様に部屋を案内してきた経験や管理会社で培ってきたノウハウを活かし、持ち家を最大限資産活用するためのサポートいたします。
持ち家の賃貸だけでなく、売却も含めてご提案をします。
「持ち家を貸すか売るか迷っている・・・」という方は、お気軽にご相談ください。