借地権とは、自己所有の建物を建てるために、地主から土地を借りる権利です。
この借地権ですが、
- 賃借権
- 地上権
の2種類に分けることができ、権利の強さに大きな違いがあります。
今回は、地上権と賃借権の違いについて詳しくまとめました。
賃借権
賃借権とは、債権(特定の人にある行為を請求できる権利)であり、地主の承認を得た上で、土地を間接的に支配できる権利です。
賃借権の権利は、地上権と比べて弱く、
- 増改築・建て替え
- 第三者に譲渡(売却)・賃貸
などをする際は、地主の承諾が必要となります。
法律
賃借権について、民法の原則では、次のようになります。
(賃貸借)
第601条 賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。出典:民法601条
しかし、民法だけでは、借地人の生活基盤である住居を保護するには不十分です。
そこで政府は、民法の特別法である「借地借家法(旧法:建物保護ニ関スル法律、借地権)」を設けて、借地人の保護を大幅に強化しています。
※借地借家法が制定された背景については、『借地権とは?歴史を知ればよくわかる』で解説しています。
登記
賃借権の場合、土地の登記には、地主の承諾が必要であり、通常はされません。
ただ、土地の登記がなくても、”建物の登記”をすることにより、第三者に対抗できるとされています。
(借地権の対抗力等)
第10条 借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。出典:借地借家法第10条
例えば、私(借地人)が地主と借地契約を結び、その土地に建物を建てて住んでいたとします。
ところが、地主は、第三者(新しい地主)に土地を売却しました。
その後、第三者が「自分は土地を貸していない(借地契約を結んでいない)から、土地を返してほしい。」と言ってきました。
このようなとき、私(借地人)が登記を備えていれば、第三者(新しい地主)に対しても、法的に借地権を対抗(主張)できます。
存続期間(契約期間)
賃借権の存続期間は、契約の種類によって異なってきます。
契約の種類 | 存続期間 | 更新 |
---|---|---|
普通借地権(新法) | 30年(法定)・30年以上(約定) | あり |
借地権(旧法) | 堅固建物:60年(法定)・30年以上(約定) 非堅固建物:30年(法定)・20年以上(約定) |
あり |
一般定期借地権 | 50年以上 | なし |
建物譲渡特約付借地権 | 30年以上 | なし |
事業用定期借地権 | 10年以上50年未満 | なし |
※法定とは”法令”で定められた期間、約定とは”当事者の合意”で定められた期間となります。
地上権
地上権とは、物権(物を支配する権利)であり、土地を直接的に支配できる権利です。
地上権の権利は非常に強く、
- 増改築・建て替え
- 第三者に譲渡(売却)・賃貸
などをする際、地主の承諾なしで自由に実行できます。
法律
(地上権の内容)
第265条 地上権者は、他人の土地において工作物又は竹木を所有するため、その土地を使用する権利を有する。出典:民法第265条
登記
地上権は、土地に登記を行うことができます。
これは、地主には登記の協力義務が法的にあり、借地人が希望すれば地上権の登記に応じなければならないとされているためです。
これにより、第三者に対抗することが可能となります。
存続期間(契約期間)
借地権の存続期間は、当事者の合意に基づき、20年、30年、50年、80年と自由に設定できます。
極端な話、存続期間を永久(無制限)にすることも可能です。
まとめ
賃借権と地上権を表にまとめると次のようになります。
一番大きな違いは、借地人が建物を「増改築・建替・譲渡・賃貸など」する際に地主の承諾が必要かどうかです。
賃借権 | 地上権 | |
---|---|---|
権利の性質 | 債権 (土地を地主の承諾を得た上で、間接的に支配できる権利) |
物権 (土地を直接的に支配できる権利) |
増改築・譲渡など | 地主の承諾が必要となる | 地主の承諾は必要なし |
登記 | 通常はされない (地主に登記の協力義務はない) |
登記される (地主に登記の協力義務がある) |
第三者の対抗 | 建物の登記で対抗できる (借地借家法・旧法借地権により強力に保護されている) |
土地の登記で対抗できる |
抵当権 | 土地の賃借権には設定できない (建物に設定できる) |
地上権に設定できる |
存続期間 | 法令で定められている | 当事者の合意に基づいて、自由に決められる |