部屋を借りるときの初期費用を大きく左右する”敷金”と”礼金”
どちらも初期費用として契約時に支払いますが、その意味は大きく異なってきます。
この記事では、部屋を借りるときに絶対知っておきたい敷金と礼金の違いについてまとめました。
敷金とは?返ってくるお金
敷金(保証金とも呼ばれる)とは、マンション・アパートなどを借りている間
- 家賃を払えなくなった
- 部屋の設備を壊してしまった
などの担保として預けておくお金です。
敷金の大きな特徴は、「何事もなければ」退去時にお金が全額戻ってくることです。
逆に言うと、
- 引越し作業で床に引っかきキズができた
- 借主の不注意でフローリングが色落ちした
などで交換・補修が必要になれば、敷金からお金が使われ、その分、退去時の返還金が減ってしまいます。
これまで、「敷金」と「原状回復」のルールは曖昧で「賃貸アパートを退去したが敷金をなかなか返してくれない」といったトラブルがしばしば発生していました。
2017年、「契約や金銭の支払いに関するルールを定めた民法の規定(債権法)を見直す改正法案」が衆議院と参議院で可決。
民法改正案で「敷金」および「原状回復」ルールが明文化され、敷金返還に関するトラブルの減少が期待されています。
礼金とは?返ってこないお金
礼金とは、字を見ての通り、物件を貸してくれるオーナーに対しての「お礼」の意味合いが強いお金です。
もともとの始まりは、学業のために一人暮らしする子供のことを「お願いします」という意味合いを込めて贈られたお金だったそうです。
そのため敷金とは性質が異なり、退去の際にお金が返ってくることはありません。
敷金ゼロは注意が必要
礼金は大家さんに「お礼」の意味を込めて渡すお金に対して、敷金は何かあったときの「担保」として渡すお金です。
原則としては、「敷金=自分のお金」のため、通常、退去する時には、敷金から「原状回復費」を差し引いた額が返還されます。
しかし、敷金ゼロの場合、
- 万が一修繕費用が必要になったとき
- 退去するとき
などに思わぬ費用が請求される可能性があります。
また、敷金ゼロの代わりに諸費用として、
- ルームクリーニング代
- 室内消毒代
- 鍵の交換費用
などが余分にかかったり、相場より高額に設定されていたり、あるいは家賃に上乗せされているケースもあります。
「せっかく、敷金ゼロと思って契約したのに、結局、敷金と同じくらいの額が別に発生してしまった・・・」とならないために、他の物件と比較したり、物件の備考欄、賃貸借契約書の特約欄などを確認しながら、その家賃や初期費用は妥当かどうか判断しましょう。
礼金ゼロの物件が増えているけど、なぜ?
昔は、敷金、礼金が当たり前のようにありましたが、最近は、”礼金ゼロ”の物件もよく見かけます。
中には、礼金ゼロに不安を感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、実際のところどうなのでしょうか?
▲なんば周辺の賃貸物件360件の内、125件(約35%)が礼金ゼロ物件となっています。
普通、マンション・アパートを経営するオーナーの大半は、金融機関から”ローン”を組んで賃貸物件を購入し、人に貸し出しています。
そして、毎月の家賃収入をローンの返済に充てています。
そのため、もし、部屋の空室が長く続いてしまうと、その分家賃収入が減ってしまい、ローンの返済にも困ることになります。
だから、物件オーナーは、「空室が続いて、家賃収入が減ってしまうぐらいなら、いっそのこと礼金ゼロにして、早く空室を埋めてしまおう」と考えるわけです。
また、それとは別に公的融資(年金融資、公庫融資、地方自治体融資など)を用いて建設した賃貸物件では、礼金を貰ってはならないという決まりもあります。
まとめると、
- 空室を解消したい
- 公的融資を受けたため、礼金をもらえない
ことが礼金ゼロの主な理由となっています。
最近は、賃貸物件の過剰供給で空室率が増加していることから、「早く空室を埋めよう」と礼金ゼロが増えている傾向があります。
「なぜ、礼金ゼロになっているのか」物件の細かい条件や周辺環境を確認しながら理由を探る必要はありますが、基本的に「礼金ゼロ」は、入居者にとって喜ばしいことと言えます。
最後に
敷金と礼金では、
- 敷金 = 部屋の担保(退去時に返ってくるお金)
- 礼金 = 大家さんへのお礼(退去時に返ってこないお金)
と性質が全然違います。
また、今回、解説したとおり、実は、月々の家賃と初期費用、敷金や礼金、退去時の費用などを冷静に考えてみると、必ずしも敷金・礼金ゼロの物件がお得なわけでもありません。
敷金は返ってくることなども頭に入れ、入居の際の初期費用や退去にかかる費用など、支払いにかかる総額は一体いくらになるのかをしっかり考えることで、よりお得な物件探しが可能となります。