「不動産を相続したが使わないので売却したい。そのときの手続きや税金について知りたい。」
そのような疑問に答えます。
本文の内容
- 相続した不動産を売却するときの流れ
- 相続した不動産を売却したときにかかる費用
- 相続した不動産を売却したときの税金と計算方法
- 支払う税金を少なくできる2つの特例
弊社は創業して11年、地域密着型の不動産会社として営業してきました。その間、相続した不動産の処分で悩まれたお客様から多くの相談を受けてきました。そのときの経験を踏まえながら、この記事では売却するときのことについてわかりやすく解説します。
1.相続した不動産を売却するときの流れ
相続した不動産を売却するときに、通常の売却と大きく異なるのは、不動産の名義を変更しなければならないことです。具体的には次のような流れとなります。
STEP1.遺産分割協議書の作成
相続した不動産を売却するには、相続人全員の同意が必要です。
この遺産協議書では、不動産に限らず相続財産すべてを相続人でどのように分けたかを明確にするものです。
その中で、不動産の名義は誰にするのか、売却したお金の分割はどのようにするのかということを定めます。
STEP2.不動産の相続登記
相続登記は不動産の名義を変更する手続きのことです。
この手続きには遺産分割協議書も必要になります。相続登記に期限はありませんが、登記を行わなければ売却することもできないので、売却するときには欠かせない手続きです。
相続登記は遺産分割協議書の他にも必要書類が多くあり、手間も大きいので司法書士などの専門家に依頼することもおすすめです。
STEP3.相続不動産を売却する
相続登記は亡くなった親から相続人に所有権を移す手続きです。
そのため相続登記まで終わらせると、あとは自宅を売却するときと同じ流れになります。
具体的には、不動産会社に査定を依頼したあと、売却活動を依頼したい不動産会社と媒介契約を結びます。媒介契約には3種類あり、どの契約を結ぶかによって売却活動に差が出てきます。詳しくは不動産売却で結ぶ『3種類の媒介契約』とは【選ぶときの考え方も解説】をご覧ください。
その後は売却活動を通して見つかった購入希望者への内覧対応を行います。購入希望者の募集から内覧対応まで不動産会社が対応してくれることがほとんどなので、売却活動に手間がかかることはほとんどありません。
そして購入希望者に物件を気に入ってもらえれば、売買契約の締結へと進みます。決済を行い、引き渡しまで終われば売却は完了です。
2.相続した不動産を売却したときにかかる費用
相続した不動産を売却するときにかかる主な費用は次のとおり。
- 仲介手数料
- 印紙税
- 譲渡所得税(所得税+住民税)
これはあくまでも上限なので、不動産会社によってはこの金額よりも安いことがあります。
印紙税は売買契約書にかかる税金で、下表のように契約書に記載された金額に応じて納税額が決められています。印紙税は、印紙を契約書に貼ることで納税します。
印紙税の費用まとめ
記載された契約金額 | 印紙税 |
---|---|
500万円超1,000万円以下 | 10,000円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 20,000円 |
5,000万円1億円以下 | 60,000円 |
1億円超5億円以下 | 100,000円 |
5億円超10億円以下 | 200,000円 |
10億円超50億円以下 | 400,000円 |
50億円超 | 600,000円 |
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7140.htm
また不動産の売却によって利益がでた時には「譲渡所得税」がかかります。これについては後ほど詳しく説明します。
相続した不動産の土地が古い場合、境界が未確定になっているものも多く、土地の境界を確定させるための測量費も必要になります。一般的には50万円~80万円程度です。
不動産を売却するときには、手数料のほかにもいろいろと費用がかかることもあるので、不動産会社に相談するなどして事前に把握しておきましょう。
3.相続した不動産を売却したときの税金と計算方法
相続した不動産を売却すると印紙税と譲渡所得税の2つの税金がかかります。そして確定申告が必要になるのは譲渡所得税の方です。
ここでは譲渡所得税について詳しくお伝えします。
まず不動産を売却などによって譲渡して得た所得に対しては、他の所得と分離した「譲渡所得」として所得税と住民税が課税されることになっています。この2つの税金を合わせて譲渡所得税ということが一般的です。
譲渡所得税を計算するには、「譲渡所得」を出す必要があります。
3-1.譲渡所得の算出
譲渡所得は、不動産の売却価格から不動産の取得費と仲介手数料などの売却にかかった費用(譲渡費用)を差し引いて求められます。
しかし相続した不動産の場合は、取得費がわからないことがほとんどです。そのようなときには、税務の特例として「売却価格の5%」を取得費として計算することが認められています。
たとえば、売却価格が2,000万円だったとすると、取得費は100万円となります。
そのため、譲渡費用が諸々の費用を足して200万円だったとすると、譲渡所得は
2,000万円 – (100万円 + 200万円) = 1,700万円
です。
3-2.譲渡所得税額の算出
譲渡所得を求めたあと、税額を算出するために規定の税率をかけます。税率は売却した不動産を保有していた期間によって2種類に分けられます。
短期譲渡所得 | 長期譲渡所得 | |
---|---|---|
保有期間 (売却年の1月1日時点) |
5年以下 | 5年超 |
税率 | 39% (所得税30%、住民税9%) |
20% (所得税15%、住民税5%) |
※平成49年までは復興特別所得税として所得税額の2.1%がさらに上乗せされます。
先ほど例に出した不動産の保有期間が30年だったときには、長期譲渡所得が適用されて次のように計算されます。
1,700万円 * 15% = 255万円
②復興特別所得税
255万円 * 2.1% = 5万3,500円
③住民税
1,700万円 * 5% = 85万円
合計345万3,500円を譲渡所得税として納めることになります。
4.支払う税金を少なくできる2つの特例
相続した不動産を売却するとき、条件を満たすと譲渡所得税の税額を少なくする特例が定められています。
4-1.取得費加算の特例
相続した不動産を売却した時期が、相続税の申告期限の翌日から3年以内であれば、相続税を取得費に加算することができるというものです。
具体的な計算式
取得費加算の特例を受けるためには、確定申告をして、相続税の申告書の写し、相続税の計算明細書、譲渡所得の内訳書の3点を添付することが必要です。
詳しくは国税庁の「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」をご確認ください。
4-2.3000万円特別控除
平成31年12月31日までに相続した不動産を売却した場合、一定の要件に当てはまるときには譲渡所得の金額から最大で3,000万円控除することができます。
これを「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」といいます。長いので、3,000万円特別控除と呼ばれることが多いです。
被相続人の居住用財産とは、亡くなった人の居住用のものとしていた家屋・敷地で、
- ①昭和56年5月31日以前に建築されたこと
- ②区分所有建物登記がされている建物でないこと。
- ③相続の開始の直前で、被相続人以外に居住していた人がいなかったこと
の3つを満たしている必要があります。
そして、相続の開始があった日から3年目の年の12月31日までに売却し、その売却価格が1億円以下であるなど、その他諸々の条件を満たしたときに3,000万円特別控除を受けることができます。
条件のなかには、「取得費加算の特例」など他の特例の適用を受けていないことというものも含まれるので、取得費加算の特例と3,000万円控除を同時に適用させることはできないという点は注意が必要です。
詳しい条件や適用のための手続きについては国税庁の「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」に記載されています。
特例の適用を受けられるなら受けたほうがいいですが、その条件の確認や手続きは手間がかかることも多いです。弊社では特例の適用も含めて、節税の無料相談も承っておりますのでお気軽にお問い合わせください。
» お問い合わせ
5.まとめ
相続した不動産を売却するときの流れと、売却したときの税額計算についてお伝えしました。売却価格が高いほど、譲渡所得税の負担も大きくなりますが、相続した不動産の売却のときに適用できる特例などを活用すればその負担を小さくすることができます。
ただし特例を適用できるのは、相続後の期限が定められているので、売却することを決めたらできるだけ早く不動産会社に相談するようにしましょう。そのときには、節税対策まで含めて相談できる不動産会社がおすすめです。